Spring Drop
クラブで時刻を忘れて無心に踊る 蛍光灯のハンドリングが揺れる度に映像化した
窓から見える桜の木も今は要らない 休憩にホッとするタバコも今は要らない
時計の針などこの場所には存在していない それでいいのだ
白いキャップを深く被り いつもより白い肌を際立たせた
言葉にできない感情は 長い月日の関係ほど心を蝕めた
なぜこの場所に来ているのかなど考える事もしたくなかった
片手に持ったピルスビールに視線をやる 泡が溢れるように揺れている
目の前で当然のようにキスをし絡み合う 微笑む姿に戸惑ってしまった
この二人はどういう面持ちで ここへ来たのだろう
この二人は私がどういう人物に見えているのだろう
心臓の音が落ち着いてしまった 体が揺れる振動が遅くなっていく
理由など何百通り 何千通り 考えても仕方がないのだ
出口の先には眩しい光が訪れていた 一本の桜の木を見上げた
涙がこぼれてしまった
今日目覚めたら 私の感情は消えているのだろうか
朝 また感情が訪れた 私は時計の針を見ていた